マケブロ―世界一分かりやすい商学の館へようこそ!

マーケティングという学問やビジネスの事について、ちょっと楽しく学びたい方へ

「ポプテピピック」の戦略は「おそ松さん」に似ている?|マーケティングさんのSNS分析で見る 2018年冬 話題になっているアニメランキング

 

タグが安定しない「ポプテピピック」は分析上手間がかかって、ほんとクソ。

 

ごきげんようマーケティングさんです!

今回は分析結果の報告が遅くなってしまい、ごめんなさい!

結局3月になってしまいました…。

それもこれも、使われている実況タグが多すぎる「ポプテピピック」のせいだ!!

 

ということで、なんとなくオチが見えてしまう「2018年冬SNSで話題になっているアニメランキング」へ早速行ってみましょう!

 

今回もYahoo!検索データのリアルタイム検索(http://realtime.search.yahoo.co.jp/search)を使って、1/1~2月上旬、アニメだと大体4話放送分の間にTwitterなどのSNSで呟かれた、今期放送中アニメの「実況タグ」を出来る限り集計しました。

 

そのデータをいくつかの角度で見ることで、

  • (事前の期待値の高さや認知度も影響して)話題になっているアニメ
  • (初期の期待値や認知度は高くないが)話題になっているアニメ

という2種類のタイプのアニメをご紹介することができます。

 

それでは、一つずつ見ていきましょう。

 

目次

 

 

1 (事前の期待値の高さや認知度も影響して)話題になっているアニメ

まずは今期のアニメを1話から4話放送日までの「実況タグ総つぶやき数」を基準にランキング化してみました!この数値が大きければ大きいほど「話題にしている人≒視聴者数が多い」といえます。

f:id:MarketingTan:20180306172543p:plain

 

ご覧の通り「」の圧勝です。2位とは6倍近く差がありますね…。さすがの話題性です。とはいえ、もともと原作がツイッターの口コミで広まったものですから当然の結果といえます。

しかし「ポプテピピック」の強さはそれだけには留まりません。序盤の「ツイート増加率」も十分に高いのです。

 

通常放送されるアニメは、たとえはじめの期待値や認知度が高くても、下のグラフのように2話以降視聴者が離れてしまう作品がほとんどなのです。「つぶやく人が減った≒観る人が減った」ということですね。

数値水準としては、0.8を超えれば「視聴者数を維持できている」方で、1を超えた場合はさらに「視聴者を増やせている」と評価することができます。

f:id:MarketingTan:20180306172630p:plain

 

では「ポプテピピック」の場合はどうでしょう。

 

f:id:MarketingTan:20180306172653p:plain

 

4話までならツイート増加率は0.82となかなかの高水準。そして念のため5話まで分析期間を延ばしてみたところ、なんとツイート増加率は1.04になります。

結局この後は勢いが落ちてしまうのですが(後の図「ポプテピピック各話の声優さん一覧」を参照ください)、序盤の段階では継続視聴者や新規視聴者をうまく囲い込めていたと考えられます。

 

 

2 「ポプテピピック」の戦略は「おそ松さん」によく似ている

なぜ、そんなことができたのか。それは原作の知名度だけでなく、アニメにも「口コミを生み出すための数々の仕掛け」が施されていたためだと考えられます。

今回はそれについて厳密な分析は行っていませんが、実はある作品のヒット時の状況とよく似ているのではないかと思い至りました。…そう、「おそ松さん」です。

f:id:MarketingTan:20180306172717p:plain

 

おそ松さん」については、第一期がヒットした2015年秋に稚拙ながらSNS分析を行っていました。

marketingtan.hatenablog.com

 

その際に「おそ松さん」が採っていた口コミを生み出す戦略と、今回の「ポプテピピック」が採っている戦略が良く似ているのです。

 

例えば、Twitterやpixivではアニメ関係のイラストをよく描いている「絵師さん」がシーズンのヒット作の二次創作イラストを積極的に描く傾向があります。

そして「おそ松さん」は、その「シンプルだけど六つ子それぞれ違った見た目をしている」キャラクターデザインにより、絵師さんは通常よりも短時間でこだわりの深い絵を作成しSNSに投稿することができました。

同様にポプテピピック」のキャラクターデザインも非常にシンプルです。その上、同作は他作品のパロディや後述する「声優リセマラ」で様々なカップリングネタを出してきているので、ファンとしてはそれをモチーフに一発イラストを描きたくなる上、短時間でそれが実現できるのです。

 

 

また「おそ松さん」は「F6」という頭身の高いバージョンのキャラクターデザインもアニメ上で登場させていましたが、「ポプテピピック」でもこっそり高い頭身のメインキャラクターを登場させています。とはいえ結局はそうしなくてもファンは自分の意思で高頭身バージョンを描いているのかも。

 

 

次に特筆すべきはやはり、両作が「意図的にバズを起こす取り組み」をしているというところでしょうか。「おそ松さん」の場合は第1話での他作品のパロディがあまりに過剰であったために、後にその映像のお蔵入りが決定しそれが大きなバズを生みだしました。

ポプテピピック」も密度はそこまで高くないものの、各話で何かしらのパロディ要素を含んでいます。

ただこの「パクリ芸」はもともと原作の頃から既に行われていたことだからか、視聴者はかなり慣れている様子で、「おそ松さん」のような分かりやすいバズが起きていたことはデータからは確認できませんでした。

またアニメ外においても偶然か必然か、いくつか騒動を起こしていたようですが、その影響も目を見張るようなものは確認できませんでした…。

おそらく今回は原作の知名度とアニメに対する期待値がもともと高かったこと、また「おそ松さん」から2年以上経った現在、視聴者側にもいわゆる炎上商法やパクリ芸への耐性が付いたためか、「おそ松さん」の時のような「大炎上」は起きなかったものと思われます。

 

 

3 「ポプテピピック」と「おそ松さん」が根本的に違う部分

さて、ここまで「『ポプテピピック』って『おそ松さん』のやり口と似てない?」という話をしてきましたが、「根本的に違う部分があるよ」ということを言及しなければいけません。

 

それは、女性ファンにターゲットを絞った「おそ松さん」に対し、ポプテピピック」は男性ファンを基礎とした全方位向きの戦略を採っているということです。

アニメ本編を見てみると「結構上の世代にしかわからない」「ニコニコの特定の動画群を観ている人にしかわからない」「そのゲームをやっている人にしかわからない」といった(どちらかといえば男性向きの)コアなネタが多いことが分かります。

 

その一方で、少し方向性に変化をつけてきているのが先の図において挙げた「声優リセマラ」です。

本作は各話を15分×2部の構成にしています。そしてそれら前編と後編は、基本的にメインキャラクターの声優を入れ替えただけで内容はほとんど同じという「ほぼ再放送状態」でTV放送しています。

声優はその前編・後編だけでなく各話でも入れ替えています。そしてその声優は、下の図のように大御所から人気女性声優・男性声優の組み合わせまで多岐にわたっていますが、特に後半から人気男性声優の組み合わせが集中してきていることが分かります。人気男性声優によるカップリングというアニメの楽しみ方を、特定の層に提示してくるようになったということですね。挙句には8話目で「サブカルクソ女に媚びている」と作中で自虐する始末。自覚アリですねこれは。

f:id:MarketingTan:20180306172758p:plain

 

いずれにしろ「ポプテピピック」の「声優リセマラ」は、単に斬新なアイデアとして話題を生みだすだけでなく、ターゲットを絞らない全方位向けの戦略としても良く機能していると思われます。

データとしても、総ツイート数だけでなく序盤の高いツイート増加率(継続視聴率)にも繋がっているのではないかと。「次はだれが声を当てるのか」気になるもんね。

全方位をターゲットとすることは、マーケティングでいうところの「リーダー(一番市場規模を押さえている企業やブランド)」がとる行動そのものです。原作の知名度、およびアニメへの期待値が高かったからこそ出来た戦略だと思います。

しかし、それ以外の細かい仕掛けはこれまでの成功事例の模倣という感じがしてなりません。今期で「リーダー」になり得ることが予想できていたからこそ、相対的に「攻めすぎない」戦略に落ち着いたのではないでしょうか。

 

総評としてアニメ「ポプテピピック」は、「アニメ業界を荒らす問題児」というよりかは、過去の事例を基に口コミを生み出す仕掛けを丁寧に組み立てる「優等生」という印象を受けます。もしくは逆に、私たちが安直な炎上商法やパクリ芸に反応しなくなったことの表れとも言えますね。ある意味、2018年冬のアニメ市場は平和です。

 

 

4 (初期の期待値や認知度は高くないが)話題になっているアニメ

 さて、ここまで「ポプテピピック」について”自”論を述べさせていただきましたが。

まだ「ツイ―ト増加率ランキング」の方を出していませんでした…。

 

ここからは、しっかり1話から4話放送日までの「ツイート増加率」が高いアニメを紹介します。「ツイート増加率」が高いアニメというのは、回が進むごとにツイート数が増加していく、または横ばいの状態を維持しているアニメ。つまり「(事前の期待値や認知度は低かったけど)口コミなどにより視聴者が増えている」「しっかり継続視聴者を抱え込んでいる」作品であると言えます。

 

ランキングは以下の通りです。

f:id:MarketingTan:20180306172913p:plain

 

今回ツイート増加率が1を超えたのは「ゆるキャン△」「宇宙よりも遠い場所」の2作品です!しかもこの2作品のすごいところは、どちらもシーズン後半になってもその勢いが衰えていないことです。

今回はそのデータ(一部欠損あります!ごめんなさい!)と共に、アニメのあらすじも紹介しちゃいます!

 

まず「キャンプ」をテーマにした極上の癒しアニメ「ゆるキャン△」です。

この作品は放送序盤からツイート増加率1.18とじわじわ視聴者数を増やしてきました。そして最近では9話目の段階で増加率1.83とその勢いがさらに増しています

はじめは「ポプテピピック」が話題を持って行ったことで、後になって注目を集めるようになったのかもですね。

アニメ内のシーズンがちょうど冬なのも起因して、「聖地巡礼」と題したキャンプに赴くファンも増加したのではないでしょうか?

いずれにしろ毎話安定して楽しんで見れる良作です。

f:id:MarketingTan:20180306173002p:plain

f:id:MarketingTan:20180306173019j:plain

 

次にまだ観てないという方にぜひ観てほしい作品が「宇宙よりも遠い場所」です。

リアル路線の青春ものに定評がある花田十輝さん脚本なので、楽しみにしていたところ大ハマリでした!「響け!ユーフォニアム」とか好きな人にはたまらないと思います。

ツイート増加率も9話目で未だ1.17と高水準を維持しています。こちらは純粋に「次の展開が気になる」という見せ方をしているので、継続視聴者をうまく囲いこめている作品といえますね。

夢や目標へ真っ直ぐに進む人たちの姿は本当に良いものです!

f:id:MarketingTan:20180306173046p:plain

f:id:MarketingTan:20180306173100j:plain

 

ということで2018年冬アニメの分析結果と、私のオススメ作品を毎度勝手ながら紹介させて頂きました!

今期は、炎上・パクリ芸を繰り広げるけど実は優等生な「」が一強状態。しかしその中でも「ゆるキャン△」「宇宙よりも遠い場所」といった良作が光る。そんなシーズンでした!

 

ここまで読んで下さったアナタ、本当にありがとうございます!!

 

ではでは、良いアニメライフを!